「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」会長に訊く
その3.埼玉県は三ない撤廃のモデルケースとなるか?
かつては、「高校生にバイクは不要」と書かれたリーフレットを配布していたほどの埼玉県が、「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」を経て、学習指導要項を改定し、三ない運動を撤廃した。
PTAによる全国的な推進活動は終了した三ない運動だが、教育委員会の指導方針や各校の校則には依然として残っており、「各校の判断にまかせている」という自治体の多くでは、事実上、三ない運動が放置されている状況だ。こうした中、埼玉県教育委員会での取り組みは他県に当てはめることができるのだろうか、
●三ない運動に代わる教育ができるのか
他県へのモデルケースと成り得るかどうかは、教育長から課長クラスまで、埼玉県での議論の内容や結果をどれだけ理解いただけるか、また、自分たちの管轄下での、歩行者や自転車も含めた高校生の交通安全教育の実態をどれだけ真剣に考えているかによると思います。
皆さん、「埼玉県の事例は良い」と言うのですが、良いということをいろんな温度差や角度で見ています。誰も間違ってはいませんが、それをいかに整理して、どういう特徴があり、何が達成できていて、どこに向かおうとしているのかを理解いただいた上で知って頂きたいです。
三ない運動をやめるのか続けるのかという議論ではありませんでしたから。その結論に至るまでのプロセスでは、1回の検討委員会が2~3時間くらい、のべ20~30時間も話しました。そういう中で、正しい情報の共有や立場が違う者同士の相互理解もありましたし、当事者(県内の高校生)へのアンケートも取りました。
当事者となる高校生がどういう気持ちでいるのか、バイクという乗り物に対する価値観がどんな実態であるかも知りましたし、今後どうするのかということを皆さんが襟を開いて議論したというプロセスを他県の方にもどれだけ知って頂けるかということが重要です。
●最も重要なポイントとは?
高校生が、本当に生涯に渡って事故の当事者とならないために、彼らにとって必要なことは何なのかを考えることです。それが担保されるか否かという議論をしないといけません。そうしたプロセスを踏まえてなお、三ない運動を続けることがベストな選択肢であれば、それは続けるべきなんです。
「三ない運動をやめて…」の後が重要なのですが、「じゃあ、乗り出す」となって、本当にこの子たちが事故の当事者とならないための教育が、三ない運動をやらない代わりにできるのかという議論は絶対にしないといけません。ここが最も重要なポイントです。それをやらなかったら全く検討していないということになります。埼玉県ではそれができました。
検討委員会の回数も重要です。誰かと話して、けっこう寝かせて、2か月後にもう1回会う。これを9回繰り返すと、やっぱり相互理解できますよ。最後に1回増やしたくらいです。(その4.につづく)
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