高校生とバイクの現在地[1]

その1.埼玉県の高校生は、バイクをどう見ているのか

三ない運動をやめて2019年度から原付・自動二輪車の安全運転講習を始めた埼玉県は、「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」において「埼玉県 高校生の原付・自動二輪車に関する意識調査」を実施した。当事者である高校生の声に耳を傾けるという点でとても意義のある調査となったが、その内容について触れておきたい。

調査はアンケート形式で、県立高校全日制12校の1,309名、県立学校定時制3校の123名、私立学校全日制2校の208名、合計1,640名に実施された。1校1学年から1クラスを抽出し、定時制課程も3学年までの実施とされ、1年生(551人33%)、2年生(551人34%)、3年生(538人33%)と1~3年生にかけて偏りなく振り分けられている。

●そもそも、今どきの高校生はバイクに興味があるのか?

さて、38年にもわたり三ない運動を展開してきた埼玉県だが、当の高校生はバイクについてどう思っているのか? バイクへの“興味”という言葉で問いかけてみると、その半数は「興味がない」という結果だった。しかし、三ない運動を強固に進めてきた埼玉県で「興味がある」「まあまあ興味がある」の合計が688人(42%)という結果はむしろ驚くべきことだ。興味の観点は様々だとしても、バイクの有用性は高校生にも認められているようだ。

●生活の足「原付」についてはどう思っているのか?

埼玉県の秩父エリアでは数十年前から特例として原付によるバイク通学が許可されてきたが、大半の高校では三ない運動が厳しく推進されてきた。通学の足としてのイメージもないだろう原付バイクだが、高校生はどういうイメージを持っているのだろうか。

表は、「どちらでもない」を境に、原付に当てはまるイメージがポジティブ寄りなのか、ネガティブ寄りなのかで分けられている。わかりやすいように多数派のイメージワードを赤色太文字とした。

すると、原付に対してはかなりネガティブなイメージが強いことがわかる。この傾向は数十年前と大して変わらないのでは?というのが筆者の肌感覚だがいかがだろうか。三ない運動のせいなのか、利用者マナーのせいなのか、はたまた二輪業界の取り組みに問題があったのか様々な要因が考えられるが、少し残念な結果だと言えるだろう。

●「自動二輪車」についてはどう思っているのか?

「自動二輪車」についてはどうだろうか。こちらは意外とポジティブなイメージが強かった。特に、「うるさい」「怖い」といった騒音・暴走問題(法令違反行為)に関係するようなネガティブを除けば、「派手な・好きな・楽しい・明るい」といった趣味性に関わる部分がポジティブに捉えられているのは興味深い。

これは、若年層の中でバイクがコミュニケーションツールのひとつとして認識されていることと関わりがありそうだ。いわゆる“陰キャ”よりは“陽キャ”の乗り物としてイメージされていると思われる。

逆に言えば、「怖い、高価、うるさい」のネガティブを抑えていくことが、バイクのイメージアップ、若年層市場の拡大につながっていくとも言えるだろう。

※出典:埼玉県 高校生の原付・自動二輪車に関する意識調査集計結果【速報版】(2017)
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